夏の陽射しがだんだんやわらうて、夜風に秋の気配が混じりはじめたころ。
おばあちゃんは、ふと心の奥にしまっとった記憶を取り出すことになったんよ。
それは、ただの昔話じゃあない。
千里を駆けて、必死に戦う人らの理由は、母の愛情を守るために。
その思いは、時代も国境もこえて、人と人をつなぐ力になってきたんじゃ。
烏山頭ダムと八田與一さん
1930年代、台湾南部に広がる烏山頭ダムは、澄んだ湖水と豊かな自然に囲まれた場所じゃった。
そこにつくられた烏山頭ダムは、台湾の農業用水をまかない、産業を支える大きな事業じゃったんよ。
八田與一さんいう日本人技師が、その計画と建設の指揮をとったんじゃ。
彼が現地で尽くしたんは、ただダムをつくるためだけじゃなかった。
湖畔で暮らす人らに新しい仕事や教育の機会をもたらして、子どもらがようけ未来を描けるようにすること――
その根っこにあったんは、親が子を思うような深い愛情じゃったんよ。
過去から未来へ、愛が導く道
おばあちゃんは語る。
「戦いや努力の理由は、立派な功績や名声やのうて、誰かを守りたいいう思いなんよ。
千里を駆けてでも、母の愛を守るために。」
その心は、技術者にも、探検家にも、教師にも、そして日常を生きとるわしらにも共通しとる。
愛があるけぇ、人は困難に立ち向かえる。
愛があるけぇ、未来に希望を残せるんじゃ。
半世紀をめぐる万博クロニクル(まとめ)
大阪万博から半世紀。
この物語は、ただの「イベントの歴史」やのうて、時代をこえて受け継がれてきた人らの思いをたどる旅じゃった。
前編では――
人類の進歩と調和を掲げた1970年大阪万博から始まって、
リンドバーグさんの来日や新渡戸稲造さんの「武士道」に触れながら、国境をこえて人と人をつなぐ心の原点を描いたんよ。
中編では――
「武士道の七徳」を通して、正義・勇気・仁・礼儀・誠実・名誉・忠義(克己)の精神がどうやって日本社会を形づくり、世界の理念とも響きあってきたんかを見つめ直したんじゃ。
そこには、騎士道や万博の理念とも通じる「心の結びつき」があったんよ。
そして最終編では――
台湾・烏山頭ダムを築いた八田與一さんの功績を通して、「母の愛のように、人を思う心」が未来を切り開く力になることを描いたんじゃ。
技術や力の結晶である万博や大事業も、根っこには「人を思う愛」がある。
そうして受け継がれた思いが、わしらが向かう未来を照らしとるんよ。
エピローグ ― 神田の古本街にて
ある日、おばあちゃんは神田の古本街に本を探しに出かけたんよ。
探しとった本は見つからんかったんじゃけど、ふと目に入ったものがあった。
それは、古びたモールス信号機。
代わりに手に取ったのは、アマチュア無線の本じゃった。
「もし空を見上げて、雲の彼方に銀色に輝く翼を見つけたら…」
喫茶店の窓際でページをめくり、慣れない手つきで机を指でトントン叩いたんよ。
そのメッセージが届く世界は、平和でなければならん。
未来は、わしらがつくるんじゃけぇ。



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